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| J物語 6話 |
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【陰り】 過去の行動が積み重ねてきた報いは、どれほど後悔してみても決して消えることは無い。 又、変えることはできないのである。 ある意味私に取っては、「運命」とも言える、Jとの付き合いが始まった。 私にとって輝かしい日々が過ぎていった。 幾度もの道筋を乗り越えてきた二人だったが故に、 どんなに喧嘩しても決して離れることは無いと信じていた・・。 法律上は結ばれることが無くとも、見えない絆が二人を結び付けていると信じていた。 彼女の面倒を生涯見ていこうとまで、決意するほどに・・・。 しかし、時の流れと共に、二人の関係も自然と形を変えていった。 男と女という生物は、お互いの存在を求めるくせに「マンネリ」と言う名の洞穴に迷い込む。 互いに自分の主義、主張を通そうとし、相手の尊厳を損なってしまう。 互いを知れば知るほど、我侭になっていくのだ。 私達の場合も類にもれなかった。 彼女の他人を省みない「幼さ」に嫌悪感を抱いていた。 彼女の為にお店に通うのが嫌だった。時間を割くのが苦痛に感じていた。 ・・・・それでも、誰よりも彼女を愛していた・・・。 「最近、Jを連れてこないね?前はしょっちゅう会いに行っていたのに。」 彼女と私の関係を知っている友人達は、異口同音に同じことを言う。 確かに、彼女との逢瀬も、忍者デートの回数も減少傾向にあった。 体を重ねても、燃えきれない二人になってしまった。 私の愛情だけが空回りしていたのかもしれない。 退屈と苦痛が交差する毎日だった。 自然に二人の距離は遠のいて言った。 彼女の帰国日が残すところ後1ヶ月半となった頃の事だ。 この頃から、だんだんと彼女の奇行が目立つようになった。 お店で泥酔し号泣する毎日。時にはグラスや灰皿を床に叩き付け、 他のタレントの制止を振り切って暴れだす始末。 彼女の小さな両拳は、壁を殴ったのだろうか、血の塊とかさぶたで覆われていた。 お店の同僚のババエ、又、彼女を知る友人から電話が盛んにかかってくるようになった。 「最近のJ、おかしいぜ。どうしたんだ?」 「常蓮、Jが又暴れたの。お願い助けに来て・・・。」 彼女の尋常ではない振る舞いは、私が駆けつけてもたしなめることはできなかった。 号泣しながら体を震わせている姿は、自律神経障害を彷彿させる程であった。 彼女の廃人同然の姿に、私は自分のふがいなさを猛省した。 自分が惚れた女1人幸福にしてやれない無力さを呪った。 彼女がこうなってしまった原因はきっと私にある。 償いをしたい。何かをしてあげたい。そう強く思った。 それからというもの、私は連日彼女のマンションへと足を運ぶようになる。 『どうしたJ、何がお前をそこまで追い詰めたんだ?』 彼女を助けたいと思った。守りたいと祈った。抱きしめながら涙がこぼれた・・・。 私のJに対する献身的な態度は、多くのタレントに共感を生んだ。 それ故か、他のタレント達は、無言で何かを伝えようとしていた・・・。 しかし、そのメッセージを理解する事はできなかった。 それから数日後の事であった。 「Honey、ポイントがどうしても足りないのです。今回だけでいいのでお店に来て下さい。」 普段お願いなどしない彼女が珍しく来店を促してきた。 私は友人のKさんを誘い、彼女のお店へと足を運んだ。 これから起ころうとしている悲劇など予想できるはずも無かった。 「いらっしゃいませ〜!」 相変わらずお店は繁盛している。好みの問題はあるが、綺麗なタレントを採用し、 高級感ある店内とサービスを心がけている。 お店の雰囲気は大変好ましい。 しばらくして、目の下にクマを作ったJが、私の横にやってきた。 「Honey、来てくれたの。ありがとう・・」 Jが横に座り、私の水割りを用意する。いつものように慣れた手つきだ。 ふと、一瞬何かが目に止まった。物凄い違和感があった。 『おい、J、手を見せてご覧?』 驚いた表情で、瞬時に手を隠そうとする彼女。 私は無理やり彼女の隙をついて、問題の手首を確認した。 そこにはまぎれも無い、自殺を図ろうとした痕跡がありありと残っていたのである。 『どうしたんだ?これ?』 彼女の表情がとたんに曇った。貝のように口を閉じ、首を横に振る彼女。 問い詰めても決して口を開こうとはしない。 彼女の表情に陰りが見えた。何かを思い出したのか、とたんに不機嫌になり、 貧乏ゆすりを始める。怒りを抑えられない様子だ。 「いらっしゃいませ〜」 ヘルプのタレントが3人ほど私達の席を取り囲んだ。 その内の1人がJにタガログ語で話しかけた。 「J、大丈夫?抑えなさい。」 その瞬間の事だ。Jは相当な早口で、(私に理解できない様に・・) タガログ語でまくし立てた。私の存在などはお構いなし。 他のタレント達は呆れ顔で相手にしていた。また、哀れんだ目で私を見ている。 ピナ同士での、タガログ語の会話は1時間程度続いた。 私にとっては苦痛でしかない。 私は本当に帰りたかった。面白く無かった。 こっちの言い分を言わせて貰えば、お金を払っている以上、恋人とは言え客は客だ。 いずれにせよ、私の存在を無視する彼女に怒りがこみ上げてきた。 とはいえ、精神状態が不安定な彼女、私には選択の余地がない。 必死に耐える他はなかったのだ。 彼女の会話の中で、私に理解できたキーワードといえば、 「たった2ヶ月」「インラブ」「別れ」「悔しい」「パルパロ」だけ・・。 時折、ヘルプの子達が、私が言葉を理解しているのではないかと心配した表情で、 こっちを見ている。 本音を言えば、・・・そこで何が話されているか分かっていた。 薄々だが、気がついていた。私はそんなに馬鹿じゃない。 ・・・でも、私を騙す気だったのであれば、完璧に隠し通して欲しかった。 最後まで騙し続けてほしかったんだ。 私は、何も理解できない素振りをしながら、ただ天井を仰いでいた。 突然の事だった。一瞬の沈黙を破り、Jの発作?が始まった。 客用灰皿をテーブルに叩きつけようとするのだ。 ヘルプの子達は慣れた手つきで、テーブルをどけようとする。 とっさに私はJを羽交い絞めにして、強く抱きしめた。落ち着くように背中をそっと叩いた。 まるで赤子を癒すかの様に。 この日、本当はアフターをする予定だった。 食事をして今までどおりホテルで抱き合うつもりでいた。 しかしこんな状態じゃ、そんな気もうせる。 常蓮さんの投稿 J物語 6話完 |
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