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J物語 2話
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【出会い】

人ごみと雑踏を避けるような場所に、私がいつも通っている料理店がある。
お馴染みの面子が毎晩のように集い来る無国籍料理のお店で、
私は仕事を終えると、必ずと言って良いほどここへ立ち寄る。

「いらっしゃーい。」

威勢のよい声が聞こえてきた。私はこの雰囲気が好きだ。
見慣れた面子が声をかけて来る。

「よー常蓮さん!元気かい?あの子とうとう帰っちゃったね。」
「寂しいかい?まー常蓮ならそんなことねーか・・・。」
「常蓮は本当にパルパロだからな・・」

他愛もない仲間達との会話。ちょっとした宴。私の心はここで癒される。
2時間程経過した頃だろうか、同座していた悪友から誘いを受けた。

「オイ常蓮!いい店があるんだが行くか?」
『うん?・・・俺、いいや・・。ちょっとまだ心痛いし。』

珍しくも誘いを断った私を、彼らは少し驚いた表情で見つめている。
(俺にだって、そんな時があるのさ!いつも馬鹿やってる訳じゃねーよ!)

「いいから来い。絶対楽しいって・・・」

悪友の強引な誘いで、無理理やりに車に押し込められた私は、
そのまま某所に連れ込まれてしまった。
そこは高級感のあるシックな作りのお店だった。タレントの女達も皆マガンダで品がある。
確かにこういう店は、私好みであるが・・・。

友人達は思い思いのお気に入りを指名した。
当然私はフリー。どんなタイプの女がきても良かった。
正直、あまり話すつもりも無かったし、当然、口説くつもりも無かった。
もともとそんなに乗り気ではなかったのだから・・・。

「いらっしゃいませー!」

私の目の前にはなかなかの美形が立っていた。
名前は・・・忘れた。いかんせん全然やる気が出なかった。
話すのがかったるかったので、私は人差し指を口にあて「しー」と沈黙を促した。
コインを取り出してお得意のマジックで、その場をやり過ごしていた。
縦横無尽に動き、瞬時に消えるコインの動作に、
横に座っていた子は歓喜の声を上げていた。
しかし、私はますます冷めていくばかりであった・・。

気がつくと次の紹介。店舗スタッフが長身の女性を連れて、私の目前に立った。
髪の美しい目の大きな女性だった。

名前を「J」と言う。

「いらっしゃいませ。はじめまして。貴方どうしたの?元気ないですね?」
『そうか・・?俺、面白くないんだ。』
「そうですか。こういうお店嫌いですか?」
『・・・・いや、嫌いじゃないが今日はどうも駄目だね。ハハ。』

声がとても可愛い女だった。
彼女の声が聞きたくなり、ついつい沈黙を破り口を開いてしまった。

『君は日本何回目ですか?』
「・・私3回目です。ベテランじゃないよ!」

力強い語調で先手を打たれた。思わず吹き出してしまった。
彼女の声と話し方が新鮮に感じられた。

「常蓮さん、恋人いますか?」
『どうして?』
「貴方グワポだから恋人沢山いるでしょう?」
『ボラボラはいらないよ。恋人いないよ。本当に・・・。』 ※口癖になっています(笑)
「本当ですか?明日のバレンタインデーは何しています?デートじゃないの?」
『ん?仕事だけ・・。デートする相手なんていない。君が俺とデートするか?
でも、明日はバレンタインだし、同伴の予定が既に入っているんだろ?』
「本当にデートする?私、日本来たばかりだから、お客さんもいないし、デートする相手もいないの」
「へ〜。でも俺、ただの同伴するつもりはないぜ。」
「金もねーし、いいお客さんにはなれないが、 それでもいいのか?」

「オオ。恋人になってくれるなら・・・。」

こんなノリの悪い私のどこが気に入ったんだろう、
彼女は嬉しそうに微笑んだ。本当に嬉しそうに。

私は自分の携帯番号を彼女に渡した。
やがて彼女は、そっと私に寄り添うような形で腕を絡めてきた。

「私、胸がドキドキしてる。凄いよ・・。聞こえるでしょ? ねぇ、本当にデートしてくれるの?」

上目使いの潤んだ瞳に吸い込まれそうになった。

「ああ。いいよ。君が電話くれればね。それとさっきも言ったが、ただの同伴
は嫌だよ。デートならOKだけど・・意味分かるだろ?」

「え?・・・ん・・・イカウならいいよ!」

一瞬耳を疑った。聞き間違いかと思った。こんなにいい女が・・?
もう一度聞きなおそうとも思ったが、どうせ冗談だろうと自分を納得させた。
そして、相変わらずの他愛も無い会話を楽しんでいた。

翌日、仕事が終わると見慣れぬ電話番号から着信だ。
昨晩のあの子からである。

「常蓮さん?本当にイカウデートOK?」
『はい。それじゃー、何時にどこに行けばいいかな?』
「15:00に○○○○の前はどうですか?私来たばかりだからそこしか知らない。」
『早い時間だな。確か他の子にシステムを聞いたら、同伴は18:00〜って言ってたよ!』
「普通はそうです。でも早く会いたいから・・。」
『オッケー。じゃあ、その時間にそこで。』

現金なもので、あれほど空虚感を払拭できずにいた私なのに、
いつの間にか気分が軽くなっていた。心が弾んでいた。
少しだけパルパロな自分に嫌悪を感じたが、
2分後にはすっかり忘れてしまった。(笑)まるで鶏。

待ち合わせ場所での彼女との再会を果たした。満面の微笑みにとろけそうになる。
彼女独特の柔らかな雰囲気が心地よかった。 (本気で俺とのデートを喜んでくれている)

俺、嬉しくなったよ。

聞くところによれば、以前のお店は、同伴やアフターのシステムが無く、
休日もスタッフが同行して買い物する位の厳しいお店だったそうだ。
(忍者がばれたババエは即強制送還らしい・・)
彼女にとって生まれてはじめての日本人との同伴との事であった。
少しだけ光栄に思えた。


常蓮さんの投稿
J物語 2話完


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